自律的な学びが組織と個人を強化する。IPA公開資料の事例抜粋
- のろ
- 2024年11月5日
- 読了時間: 4分
更新日:3月13日
目次
はじめに
個人は企業に依存したキャリア形成から、自律的なキャリア形成に変化する一方で、企業は、個人の自律的なキャリア形成や学びの為の環境整備をして、相互に選び選ばれる関係構築が重要な課題となっています。しかし、IPAが実施してきた2022年度までの調査結果からは、企業の取組みが進んでいないことがわかっています。そこでIPAでは、変革の為のヒントとしてもらうべく、2024/4/15に「事例企業における自律的な学び促進の取組み」を公開しています。

その中で紹介されている事例のうち、特に興味深かった3つをピックアップしました。AIの登場などによってIT技術が加速度的に進化していく社会の中で、企業に求められる環境整備とはどのようなものなのでしょう。日本国内でも先頭を走っている企業のDX事情を見ていきましょう。
事例①:味の素株式会社
自律的な学びの施策実施に至った背景として、「世の中のニーズの変化に付いていけないのではないかという危機感」「事業変革推進にはデジタルを用いることが不可欠だが、デジタルスキルを持った人材が多くない」があがっています。こちらはどの企業でも目にするような当たり障りのないものです。
実施した様々な施策の中でも、トップダウンの意識改革や働き方改革による「危機感の醸成と学ぶ時間の確保」。全社的な情報提供に加え「意欲の強い個人への情報提供」を重要な施策としています。
知識のアウトプットとして、ノーコード開発ツールを使用した市民開発活動や社内SNSを通じた情報共有の場も提供されています。
事例②:株式会社サイバーエージェント
自律的な学びの施策実施に至った背景として、「IT企業の特質から自律的な学びに抵抗がないメンバーが多いこと」「エンジニア採用市場の激化によるリソース確保の関する課題」があがっています。もともと自律的な学びに抵抗感が少ない社風を活かし、社外からのリソース調達だけでなく社内リソースの強化を図りたいといった意図がうかがえます。
実施した様々な施策の中でも、"決断経験が人を育てる"という「育成方針の徹底」。"能力の高さより一緒に働きたい人を集める"という「社内カルチャーの確立」を重要な施策としています。
まずは土台となる組織作りに注力し、学びの方向性を間違えないように示します。安定した土台と明瞭な学びの方向性が両立することで、社風やカルチャーに後押しされて自律的な学びが継続します。
事例③:株式会社フジワラテクノアート
今までの2つの事例は、従業員数が1万人を超える大企業でした。規模の違いで参考にならない可能性も考慮し、従業員150人程度の中小企業も見てみましょう。
自律的な学びの施策実施に至った背景として、「個人のノウハウに依存しており、持続的成長は望めないという危機感」「各工程の効率化・データ活用等を推進する人材が不足している」といった一般的なものがあがっています。
実施した様々な施策の中でも、手段としてのDXと個人面談で浸透させた「ビジョン策定を通じた変革の必要性の醸成」。システム導入と資格取得による「業務改善を通じた学び」を重要な施策としています。
基本的な流れは今までの事例と似ていますが、従業員1人1人と面談を実施していたりなど中小企業ならではの距離感を活かした施策も見られます。
さいごに
これらの事例から、組織作りや意識改革が重要であると考えられます。

学びの動機付けに危機感を利用し、ビジョンやカルチャーを提示して進むべき方向性を示すことが王道のシナリオと言えるでしょう。学びを組織全体に波及させるには、敏感に反応を見せた個人に対して継続的に支援を行うことが不可欠です。また、学びを陳腐化させないためには、業務でのアウトプットや広域な情報交換の機会が必要です。